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2025年4月27日 (日)

ワサビ田小屋跡地

わたしは各地に別荘を持っている。クルマを停めればそこは別荘地、テントを張れば豪邸別荘へと早変わり。その中でも格別の“別荘”が、愛知県の山中、鳳来峡のそばにある。

屋根も畳も風呂も電気もテレビも揃っていて、不足しているのはエアコンだけという、3LDKの小屋だ。もともとは妻の祖父がわさびを栽培していた家だったが、今ではわたしたちしか使わなくなり、わたしが管理人のような形で住み着いた。

家の前にはわさび棚があり、沢の音が常に聞こえてくる。蛍の時期には無数の光が舞い、わさび田を覆うように森が茂っているので、夏は蝉が賑やかだ。気温は静岡よりも2〜3度低く、夏はエアコンが不要だが、冬は極寒となり大型の石油ストーブが欠かせない。

この小屋で一番気に入っているのは、2階の和室の音響が素晴らしいこと。チェロの音がとても美しく響く。
さらに、この地には野生ランをはじめとする多種多様な草花が自生しており、時間を持て余すどころか、観察や手入れに追われて忙しいほどだ。
五右衛門風呂も格別で、わたしが今までに体験したどんな温泉よりも心地よい湯加減だった。また、国道はあるものの、山中の一軒家ゆえ、楽器をどれだけ奏でても誰の迷惑にもならない。

いつ頃から住み着いたのだろうか。子どもが生まれてから度々訪れるようになり(庭でカニが取れるので大喜びだった)、かれこれ50年ほどになる。特に、山野草を求めて写真を撮ったり、犬を飼い始めた30年前からは頻繁に通うようになり、多い年には年間60日も滞在した。
かつては3〜4時間かけてやって来ていたが、新東名と三遠南信道路が開通してからは、70分ほどで到着するようになった。

そして——その小屋はとうとう取り壊されることになった。できればその現場を見届けたかったが、それも叶わず、今日は跡地を訪れた。
いや、正確には、庭にあった山椒の花芽を摘みに来たのだったのだったが、残念かな花は終わっていた。

家のあった場所が平地になっているのを目の当たりにし、胸にぽっかりと穴があいたような悲しさがこみ上げてきた。妻はぽつりと「見たくなかった」とつぶやく。そこは、わたしたちと、2世代の犬とが50年楽しんだ、家の跡だった。Img_1302 Img_1305

アマティも先代のHanaもここにくると毎回宇連川に飛び込む。
写真はすぐ近くの「東洋のナイアガラ」と呼んでいる場所。もうここにも簡単に来るのは難しい。
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アマティ、13歳だけどなかなか見事な泳ぎっぷり。
川の流れが早いが流されながらもしっかりわたしの元に帰ってくる。
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