チェロの聞き比べ
1週間前だった。某大学の2年生70名に、チェロの演奏を聴かせるにあたって、2台のチェロの聞き比べて多数決で音のいい方の楽器でコンサートを行う企画だった。
左のチェロはE.H.Roth(ドイツ)のstudent modelで、右のチェロはMartin Stoss of Vienna (1778-1838)である。
Rothはわたしの学生時代に使っていた楽器で、Martin Stossはその後購入したお気に入りの楽器である。
ちょうど学生にバッハの平均率クラビア曲集の最初のプレリュードを弾ける者がいたので、両方の楽器でグノー=バッハのアヴェマリアを弾いたが、学生達の反応がないのでバッハの無伴奏チェロ組曲1番のプレリュードを弾いてみた。この曲の方が違いがわかるようで、左の楽器2割、右の楽器8割といった結果だった。
両者に1桁以上の価格差があるのに、しかもRothは殆ど弾いていない楽器なのに、この結果は予想外だったが、今の若者は生の音を聞くのも殆ど初めてだったので、しかたない結果かも知れない。
というより[本物がわかる]ヒトになってもらいたいと願わずにはいられない。
次に弓による実験を行った。
左の写真の弓はFRGLASSと刻印してあるが全く不明。右の写真はA.Vigneron a Parisである。クリックしてみていただければ素材も作りも歴然としているのが解ると思う。値段も当然ながら2桁以上違う。
この2本の弓で同じ曲を弾き、学生達の反応を見てみた。
驚いたことに、その違いを誰一人として言える者はいなかったのである。
この結果にはわたしもいささかショックを隠すことはできなかった。
このことは、義務教育においていかに音色の指導がおくれを取っているのかを如実に物語っているのかも知れない。
こうなると「本物」がわかららなくともいい、せめて「違い」がわかるるおとなになってほしいと願うのはわたしだけだろうか?
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